漆黒の液体に白い湯気.

食べ歩き ,

漆黒の液体に、白い湯気が舞う。
一口飲む。
気位高い珈琲は、がっしりとした体つきで、「どうだ」と、誇らしげに囁く。
砂糖を、小さじ半分入れる。
表情が和らいできた。
クリームを、小さじ一杯入れる。
気品はそのままに、甘みが苦味を中和して、肩が丸くなった。
柔和になった液体は、滑るように舌を過ぎ、喉に落ちていく。
そして脳を弛緩させ、心をじっとりと温める。
銀座「トリコロール」にて。