金沢「片折」

湯豆腐を囲む人は、無口な人がいい。

食べ歩き ,

炉の冬の 
とどのつまりは 湯豆腐の
あわれ火かげん うきさかげん
月はかくれてあめとなり
あめまた雪となりしかな
しょせん この世は ひとりなり
泣くも笑うふも
泣くも笑うふも ひとりなり。
たる源に作ってもらったという、特製湯豆腐桶を前にして、久保田万太郎のうたを、心のなかで唱える。
熱々の湯豆腐を、そっと口に滑り込ませる。
湯豆腐を囲む人は、無口な人がいい。
それぞれが湯豆腐へ人生の思いを移しながら黙々と食べ、酒を飲む。
そうありたい。
人生の悲哀と温情が豆腐に染みていた。