湯島・鳥栄

食べ歩き ,

湯島・鳥栄

明治四十二年創業より、年中しゃも一筋。戦後の建てられたしもた屋風二階家。二階の入れ込み式座敷か、個室でいただく。2007年に改築されたが、風情はそのままに強固にしたという。

赤くおこった炭がつがれた銅製角火鉢に、丸い鉄鍋を乗せ、丹念にとられたことがううかがえる、澄んだ鶏スープを注ぎ、特別に飼育された雌しゃもの腿肉、胸のそぎ身、砂肝、心臓、レバー、葱、焼き豆腐を、順次店の方が入れてくれる。

芯部がレアな煮え具合を見計らって、山椒を散らしたおろし醤油をからめて口に運べば、優しい滋味が舌に広がる。

焼き豆腐も吟味されたもので、千住葱は、巻が固く甘い。

肉を食べ終わる頃合いに、階下からトントコトントコというリズミカルな音が聞こえ始め、やがて卵黄を落とした叩き肉が運ばれる。きめが細かく、ふわりと口中にうまみが広がり、幸せを呼ぶ。

最後は、ご飯。香り高く、甘く、光り輝く、上質なご飯で、そのままでもよし、おろし醤油を乗せ、スープをかけて掻き込んでもうまし。肉をお替りしすぎず、このご飯の入る余地を残しておくこと。

サービスのタイミングが見事で、こちらの食べる速度に見事に合わせて、各皿を供す。家族と営む、店の方々の対応も爽やかで、心が温まる。

淡い中に滲む深い味わいを、しみじみと堪能する、東京が誇る良心である。

予約は二か月前の一日に電話予約で。鶏鍋一人前    円。