深夜の洋食は蜜の味

食べ歩き ,

深夜の洋食は蜜の味がする。

ここは、かつて一流シェフたちが夜な夜な訪れていた、洋食屋である。
「ボラーチョ」、つまりスペイン語で「酔っ払い」を意味する店名に敬意を表し、酔っ払ってから行った。

三人で焼酎のボトルを飲み干してから行った。
今はおばあちゃんとその娘さんがサービスをし、孫が料理を作っている。
茄子のグラタンの熱々を口に運んで、チーズとホワイトクリームに抱かれながら溶けていく茄子の甘みに、歓声を上げる。
そして、ガーリックトーストも頼み、ソースをたっぷりとつけて食べることも忘れない。
次は? そう私、立場上トンカツをどうしても注文しなくてはいけないのです。と無理やり理由をつけてpork cutletを頼み、夜のトンカツ会議を開いてみました。
「スパゲッティボラーチョってなんだ?」
「聞いてみよう」。
「いや聞かずに頼もう。食べればわかる」。と、また理由をつけて、ついに禁断の炭水化物ナイトが幕を開けた。
ミートソースのようだけどそうではない。デミグラス主体で煮込まれた肉が入っている。
「おおこれは赤ワインじゃ、くるしゅうない、赤ワインを持って参れ」。
スパゲッティ食べてワイン飲んだら、なぜか腹が減った(錯覚)。
「仕方ない、ピザも頼むか」。
仕方ないのである。やむを得ないのである。
そしてアンチョビピザ様がやってきた。ピッツァじゃないよ。ピザだよ。
薄い生地は、カリッとしながら、ふんわりもしている。
ピザとピザトーストの間を走る、ピザなのである。
チーズのコクとソースの甘みの中から、アンチョビの塩気がキックする。
練れた塩気が夜の闇を甘くする。