浅草「仁行」にて。

浅草海苔を焙りて揉み加ふ。  代二十四文

食べ歩き ,

花巻そばが好き。
磯の花の香が顔を包む。
鼻をくすぐるつゆのまあるい香りに目を細め、つゆを飲む。
海苔のうま味がつゆに溶け込み、ほんわりと気分を高揚させる。
うま味の中を、細き、細き蕎麦がすり抜ける。
その瞬間、海の豊穣が波しぶきを上げた。
「はああ」。
漏れるは、充足のため息一つ。