なにかこう、生き物のような粘りがある。
武蔵中原「我門」のコムタンは、コラーゲンの甘みに溢れて、テロンと口に流れてくる。
熱々の液体なのに、ゆるいゼリーの感触があって、唇や舌、上顎を撫で回す。
流動体と言おうか、命のうごめきが優しい甘みとなって消えていく。
牛尾を大量に使うが、3時間しか煮込んでいないという。
「よく何時間も煮込むというけど、そんな必要はない。3時間。ただ順番が必要なんだ」。
と、船田社長は言う。ただその先は教えてくれなかった。
元肉屋で焼肉屋に卸しているうちに、自分の取引先のレベルの低さに嘆き、このまま彼らの応対をしていくには、肉屋として限界があると思い、焼肉屋を始めた人である。
ミノも、ホルモンもカイノミも図抜けている。
そんな彼の意地が詰まったコムタンは、800円。
武蔵中原「我門」のコムタン
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