機械が料理を作れるのか。

昨夜 IBMが展開するコグニテイブ・コンピューテイング「IBM Watoson」の、未来構想プレゼンテーションが、「レフェルヴェソンス」で行われた。
IBM Watosonは、膨大な情報を羅列するだけの従来型検索エンジンからの脱皮、進化し、蓋然性の高い判断に導いたり、見落としていた情報の組み合わせを提示し、人間の意思決定をサポートする、より賢いコンピューターパラダイムで、第二世代といわれるPCやスマートフォンの時代から移行する、第三世代のコグニテイブ・コンピューテイングの一つである。
なにしろ、我々が話す自然言語を解釈し、学習を続けて成長し、仮説生成し、評価を行う、とても賢いやつなのである。
米国では医師の問診や薬剤師からスタートし、各社のコールセンターやクレーム処理などが機械化できるように取り組んでいるという。
つまり何でも聞いても、何でもいかようにも答えを優先順に出してくれる。
企業分析やファンド運用だけでなく、
最近こんな体の状態だけど、食べるべき料理は?
ティーン向けヒット曲を作って女性に歌わせたいんだけど、どんな歌詞と曲がいい?
なんてのも答えをいくつか出してくれる。
例えばウェイトレスがつけたコンタクトレンズがネットを通じてIBM Watosonにつながり、瞬時にをお客さんの疲労度を感知して、おすすめの料理をいくつか選ぶなんて、SFの世界もすぐ先にある。
しかしこうした新しいコンピューテイングの世界は、理解しがたく、ややもすると難しい。
そこで料理を通じて、わかりやすく体感してもらおうというプレゼンを行ったわけである。
生江シェフは、いくつかのキーワードを打ち込んでWatosonに質問する。
「蕪」「ソテー」「フランス風」。「牛肉」「ロースト」「冬」。
すると料理支援アプリのコグニテイブ・クッキングがいくつかのレシピを提案する。
それを参考にして、生江シェフが料理を創造するのである。
スペシャリテの蕪料理は、豆やレタス、茸のデュクセルと合わせられた。
いつものシンプルな、蕪に意識を向かわせる、そぎ落とした皿とは明らかに違う。
しかしシェフが「自分の価値観を崩してくれる発見をしました」というように、そこには別の意味が生まれていた。
牛肉には、ホースラディッシュが提案されたとのことで、包容力を感じさせるソースが添えられていた。
しかし、シェフのエスプリで焦がした芽キャベツが砕いて散らしてあり、それを牛肉にまぶして食べると、たき火を連想させる。
ソースの包容力と合わさって、冬の情景がゆっくりと膨らんでいく。
やはり最後は人間の感性が勝るのは当然なれど、胸弾む明日が待っているのは、間違いがない。

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