乃木坂「乃木坂しん」

松茸の真実3

食べ歩き ,

松茸ご飯を頼んだというのに、土鍋を開けるとそこには、白いご飯しかなかった。
「炊き込んじゃうと、香りの良さが薄まると思いました」。
そのご飯に、切りたての松茸を入れて、混ぜる。
出汁や醤油で味付けした、松茸ご飯のほうが、うま味は強い。
しかし僕らはそのうま味の強さに、ただ甘えていただけではないのか。
ひとくち食べてそう思った。
ご飯の白い艶めきに抱かれて、無垢さを感じさせる、薄茶がかった松茸の白が横たわる。
米の甘い香りが揺らぐ中、松茸の芳香が鼻の襞をくすぐる。
「ああこれが松茸ご飯か」
当たり前のことに気づくのに、人間は時間がかる。