東京の夏の過ごし方

食べ歩き ,

東京の夏はいけません。

もう、蒸し暑くっていけません。年々ひどくなってないですか。

まあ僕の場合は、夏の間はずっと軽井沢にいて、隅田川の花火大会を向島芸者と楽しむときくらいしか東京にいないので、関係ないですけどね。

と、いいたいなあ。

実際は毎年東京にいて、うだる夏を満喫させていただいている。そのため、いかに暑さを回避するか苦慮しているのだ。東京ならではの避暑計画である。

計画の中核は当然食べ物であるが、それ以外の工夫もある。まずは六月より準備する。ホタルの夕べの老舗格の椿山荘に出かけて夕涼み。これで盛夏への前向きの心構えが芽生える。

七月に入るとほおずき市に朝顔市。これがなきゃ東京の夏は始まらない。有名なのは初旬の浅草や入谷だが、23日からの文京区の市もよい。出かけるは、出身小学校の裏手にある、勝手知ったる伝通院。歩いて十分の源覚寺のほおずき市も忘れずに。

そう、市に出かける前に、東京ドームのラクアによって、現代版ウォータージェット、ワンダードロップやホラーハウスで、体と肝を冷やして出かけるのと、なお涼しいゾ。

花を買ったら昼飯だ(やはり食べ物なのね)。この辺りで夏にふさわしいといったら、江戸川橋の鰻屋「石ばし」か、西片の緑豊かな庭園をもつ一軒家フレンチ、「ル・リス・ダン・ラ・バレ」の昼食だ。

さあいよいよ暑くなってきた。もう仕事なんかやってられねぇとなったら、さっさとやめて浅草にひとっ走り。

「飯田屋」の入れ込み式座敷に座り、冷たいビールをあおったら、どぜう鍋の登場だ。汗をかきながらつつく、夏の鍋。食べたあとの爽快なこと。たまりません。

鍋といえば、ちょいと足を伸ばして、日本堤「中江」の桜鍋でもいい。特に昼の馬龍ランチはお値打ちだ。

鍋を食べたら、花やしきのお化け屋敷へ。関東大震災で死んだ動物の霊がお出ましになるようなので、涼むこと間違いなしである。 

八月に入ると花火ってことになるが、人込み嫌いなので静かに涼みたい。とっておきが根津美術館。和の美をとっぷりと鑑賞したら、併設のガゼボで一休みするのだ。店は鬱蒼と茂る雑木林に建てられた木造屋。胸のすく緑の天蓋と吹き抜ける清々しい香りに、都会と仕事と汗を忘れさる。

 といえばビアガーデンも欠かせない。重要視するのは、緑の風景。北の丸公園をお堀越しに望む九段会館の屋上や、手入れの行き届いた庭園広がる、明治記念館の鶺鴒がおすすめだ。前者なら軽く飲んで、出始めのシンコを食べに、池波正太郎よろしく寿司政へいくのもしゃれている。後者なら、信濃町のタイカレー店メーヤウで、辛さに、汗噴き火を吐き、高揚を鶺鴒で鎮静するのも悪くない

人込みは嫌だが、夏は祭りだぁとくるなら、深川八幡祭り。担ぎ手に水を浴びせかける、意気と涼しさと存分に楽しんだら、東陽町のホテルイースト21の欧風プールで自分も水を浴びる。お腹が空いたら門前仲町の浅七に戻って、冷やし煮茄子やうざくで一献かたむける。いい一日ですよ。

も一つ祭りをあげるなら麻布十番納涼祭り。年々すごい人出になっていくが、国際色豊かな屋台と、都心にありながら下町庶民感覚漂う雰囲気は、東京の夏を過ごしていることを痛感させるからだ。

ああ夏が待ち遠しい。こうしてみると、東京を離れたくないじゃありませんか。

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