東京とんかつ会議53
御成門「燕楽」ロースカツ定食2300円
<肉2、衣3、油2、キャベツ2、ソース2、御飯2、新香2、味噌汁2、特記なし 計17点>
かつてこの店で、ズルをしたことがある。雑誌の取材で、店の休憩時間に、先代が一枚だけロースカツを揚げてくれたのである。それは目が覚めるようなとんかつだった。衣と肉のバランス、衣が放つ香り、食感、油切れ、甘く溶ける脂、溢れる肉汁。そうかとんかつとは、こんなにも素晴らしい料理だったのかと、いたく感動した。
ご存知のように、先代の薫陶を受けた職人たちが、都内で素晴らしい店を開いている。池上「燕楽」、高田馬場「成蔵」、千鳥町「燕楽」。いずれも東京を代表するとんかつ屋である。
久しぶりに訪れた。変わらぬ盛況ぶりであるが、暖簾が色あせ、千切れかかっているのが気にかかった。昼のサービスカツは高温の油で、10分ほどで揚げるが、分厚い「ロースカツ」は、より低温で、20分かけて揚げ、5分以上寝かせる。その間お新香と甘めの味付けのポテトサラダが運ばれるので、それをつまみながら待つ。
肉は平田牧場三元豚。断面は肉汁がしっとりとにじみ出て美しい。食べればほの甘い味わいがあり、脂の溶けもいい。しかし同価格の他店と比べると肉のうま味にかける部分があり、余熱で最後の方は、少しパサついてしまうことが残念である。また端の脂の多い部分の脂と肉の間の筋に十分に火が通っておらず、噛みにくい点も惜しい。衣はサクサクというよりもカリカリの仕上がりで、肉との対比が面白い。ただ肉質のせいか、揚げ温度のせいか、食べていると衣が剥がれてきてしまうことも残念で、油を2とした。
キャベツは切りたてではないがみずみずしく、お新香はキャベツと胡瓜の浅漬けと、蕪と胡瓜の糠漬けに沢庵、汁は甘めの味噌で仕立てた豚汁。ご飯は柔らかめ、ソースは少し甘みが強いが、脂の多い部分にかけるといい。
来年で創業65年。老舗格のとんかつ屋としての矜持を、もう一度見たい。
山本氏
【肉2衣2油2キャベツ2ソース2御飯2味噌汁2お新香1特記コロッケ1計16点】
河田氏
肉2、衣2、油3、キャベツ2、ソース2、御飯2、新香2、味噌汁2、特記メンチかつ18点