東京とんかつ会議48田園調布「かつ久」

とんかつ会議 ,

東京とんかつ会議48  
田園調布「かつ久」特ロースかつ定食2000円
【肉2衣2油3キャベツ2ソース2御飯2味噌汁3お新香3
特記なし計19点】各項目3点満点特記1点総計25点満点

 高級住宅街で知られる田園調布には、長嶋茂雄さんがi行きつけだった「鳥瑛」や、鰻の「平八」など、実は庶民的な店が多い。この「かつ久」もまた、そんな店である。土曜日の昼にお邪魔したが、店内はとんかつを楽しむ人で満席だった。
 家族連れや男性一人客もいるが、他のとんかつ屋では見かけない年配のご婦人が多いのも、この地ならではの微笑ましい光景である。
 そうした御婦人客が頼むのはヒレカツだが、この店の衣にはロースが合う。中粗の衣は、カリッと香ばしく揚げられ、それだけで魅力だが、衣の存在感が強いため、ヒレカツや海老フライより、特ロースカツ以上でバランスがとれ、威力を発揮する。
 油は、ラードに白絞油などを混ぜているのだろうか。ラードの香りがしながらあっさりとした後味で、油切れもいい。肉はきめ細かく脂もおいしいが、昨今の銘柄豚を使った他店の魅力からするとやや見劣りする。また余熱で火が入りすぎた後半は、豚の味わいが減少してしまう。
 人参、大根、胡瓜のぬか漬けは、とんかつの合いの手として実によく、味噌の香り高い、なめこと豆腐、三つ葉の赤だしとともに、真っ当な和定食の姿を表している。
 ソースは一種類。甘酸っぱくとろりとした、中濃ソースだが味にいやらしさがなく、とんかつにかければご飯を恋しくさせる。