東京とんかつ会議166高田馬場「なりくら」上ロースカツ定食1980円

とんかつ会議 ,

東京とんかつ会議166高田馬場「なりくら」上ロースカツ定食1980円
【肉3衣2油2ソース2キャベツ3ご飯2味噌汁3お新香2特記なし合計19点】各項目3点満点特記1点総計25点満点
 「成蔵」が南阿佐ヶ谷移転後、一緒に働いていた料理人が店名を「なりくら」とし、同場所で再スタートされた。
 朝6時半から行列ができ始めていた前店とは違うが、10時30分に行くとすでに行列ができて、サービスの方が注文を取り始めていた。その半数以上が外国の方である。移転の情報を知らないのかもしれないが、日本で名の高いとんかつ屋に行こうと思ったのだろう。大きなキャリートランクで来ている人もいる。
 とんかつ屋に外国人で行列ができる。こんな日が来るとは、誰も思わなかっただろう。とんかつ好きとしては嬉しい限りである。
 そのとんかつは、「成蔵」譲りの白い衣をまとっている。普通の“たぬき色”ではなく、色の薄い“きつね色”をした姿は、師匠とここだけであろう。
 噛めば、カリッ、サクサクと音の立つ痛快な衣である。カツをあげる音はあまり聞こえないので、中温から温度を上げて揚げきっているのだろう。
 肉は、「成蔵」時代から使われていた霧降高原豚で、きめ細かく甘い香りを感じる豚である。ただ最後の揚げがやや長すぎるのか、豚肉に若干火が通り過ぎていて衣が一部はがれぎみな点と、休ませる時間か油から上げるタイミングのせいか、やや油切れが悪く、また細い部分の脂下の筋への火の通りが後一歩な点もあり、衣と油を2とした。
 とんかつを語る時に、豚のブランドや衣の具合などに話が集中しがちだが、この料理の中で、“揚げる”という仕事が、いかに肝要で困難かということがわかる。
 店を受け継いだ最初から行列が途絶えず、お客さんが押しかける。こんなことは滅多にない。商売とは嬉しいが、自分のペースをつかむ前に、次々と仕事をこなさなくてはいけない大変さはあろう。だがその忙しいという商売的幸運を、自らの仕事への課題として、さらなる上の仕事を目指して欲しい。
 脇役では、豚汁が良かった。麦味噌を使い、味噌自体の甘みと香りがあっていい。またキャベツも細くみずみずしい。ソースとご飯は及第点。キャベツの浅漬けと沢庵のお新香は、とんかつという料理を考えると、もう一工夫欲しい。大根と人参の細切り甘煮がつくが、これをなくしてお新香に注力してほしい。
 またカキフライ、珍しい白子フライも食べてみた。よくできているが、こちらもとんかつ同様、“揚げる“という調理の理想を突き詰めてほしいと思う。
山本氏
【肉3衣2油2ソース2キャベツ3ご飯2味噌汁3お新香2特記なし合計19点】
河田氏
肉3、衣3、油2、キャベツ2、ソース2、御飯3、お新香2、味噌汁3、特記 なし 計20点