東京とんかつ会議159 荒木町「車力門ちゃわんぶ」ロースかつ3000円

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東京とんかつ会議159 荒木町「車力門ちゃわんぶ」ロースかつ3000円
【肉2衣3油2キャベツ3ソース3御飯3味噌汁3お新香3特記カレー合計23点】各項目3点満点特記1点25点満点
 予約至難の人気割烹だったが、店主が「くろぎ」に入社、一旦閉店の後、昼のみのとんかつ店として復活した。
 蓋つき茶碗で出されるご飯は、輝いて甘く香り、お客さんごとに味噌を溶いて供する、油揚げの味噌汁は、旨味に滿ちて香り高く、心を緩める味である。
 キャベツは細く切りそろえられてみずみずしく、甘みがある。キャベツときゅうりなどを合わせたお新香は、とんかつの味を一旦切る役目を果たし、とんかつ界で初の温かいまま出される自家製ソースは、野菜の優しい甘みが溶け込んでいて、品が漂う。
 また途中から出される、黄身入りカレーソースは、まろやかなうまみがあって、ご飯にかけても、とんかつをちょいとつけても楽しい。黄身をもう一つもらい、卵かけご飯にして、その上からカレーをかけても、おいしい。しかもこうした上等の脇役陣は、すべておかわり自由である。味噌汁をお代わりすると、また出汁に味噌を溶いて味見し、出された。
 さて肝心のとんかつは、「脂は多め少なめですか?」と聞かれ、米油でじっくりと揚げてから休ませ、運ばれる。「すぎ田」とおなじく、細い幅で切られたカツは、約300gという大きさで、中心がレアの揚げ上がりである
 衣は細かく、ぴったりと密着して、揚げ上がりもよい。ここに米油のあっさりではなく、ラードの甘い油の香りが加わったらと思うのは、贅沢だろうか。
 ここまで完璧でありながら、ただ一点だけ、足りないと思うのは、肉である。脂はコクがあって十分うまく、右端の脂身が多い部分など、唸るほどの味わいである。ただ赤身がパサつき、やや旨味に乏しい。レアに揚がった中心部ではなく、火が通って薄い桃色になった赤身部分からのうまみを、充分感じ取れない。
 米沢の三元豚を使っていられるが、真空パックにされた肉の保管期間の問題か、この価格で300gの肉を出し、脇役陣にもコストをかけているが故の問題か、蒸らしの問題か、非常に惜しい。この一点さえ改革されたら、都内最強のとんかつ屋は、間違いない。