東京とんかつ会議殿堂入り審議82  武蔵小山「たいよう」のロースカツ定食1650円

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  • 武蔵小山「たいよう」

東京とんかつ会議殿堂入り審議82  武蔵小山「たいよう」のロースカツ定食1650円
<肉3、衣3、油2、キャベツ2、ソース2、御飯3、新香3、味噌汁3、特記串カツ 計22点>

清潔感漂うカウンターに座ると、ご主人が黙々と仕事をしている姿が見える。そのリズムがいい。
肉を冷蔵庫から取り出し、軽く叩き、塩をふり、衣をつける。油の様子をうかがう。肉を油に入れる。揚げ上がりをうかがう。
それぞれの工程で無駄がなく、軽やかなリズムが合って、見ていて楽しくなる。
特にヒレカツをにパン粉をつけ、両手で形を整えている姿は、すし職人の軽やかさと似ていて、いかにこの職人が仕事を大切にしているかがわかる。
揚げられたとんかつは、茶色の衣がピタリと肉に張り付き、断面を見れば、うっすらと脂で濡れて、輝いている。
噛めば、カリリと衣に歯が当たって、肉にめり込んでいく。
肉はは柔らかくきめ細かいが、ギシギシと音を立てて歯が入っていくようなしっかりとした肉質である。そしてほの甘い豚肉の香りが流れる。脂の質も緩すぎずに、さらりと溶けていく。柔らかいだけではなく、肉を噛む喜びも与えてくれるとんかつである。
この肉とやや固めに揚がったパン粉とのバランスがいい。
油切れもすこぶるよく、衣と肉の食感を存分に楽しめる。ただしキャノーラ油系だろうか。油の香りにコクがないのが、少し寂しい。
キャベツは乾燥気味だが、十分に甘く、ご飯、豚汁ともに質が高い。古漬け胡瓜と人参、大根の新香は、とんかつの合いの手として万全。 
ソースはフルーティーで、後口の切れがよいが、やや甘い。だがその甘酸味を、カツの端の脂が多い部分にかけると、脂の食感とあいまって、おいしさが増す。 
また串カツは、タマネギを使い、注文してから肉とタマネギを刺して揚げる。肉はやや小さいが、生の食感と加熱した甘みが共存するタマネギの揚げ具合がよく、お奨めである。