東京とんかつ会議 第107回高田馬場「とんかつひなた」上ロースかつ定食(昼夜1800円)

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東京とんかつ会議 第107回 高田馬場「とんかつひなた」上ロースかつ定食(昼夜1800円)
肉3、衣3、油3、キャベツ2、ソース3、御飯2、新香3、味噌汁2、特記1ランプかつ トントロかつ  総合23点(各項目3点満点、特記項目含め25点満点)

 一口食べて目を丸くした。なんとも肉がきめ細かい。前歯が肉にゆっくりめり込むと、甘く香り、肉汁がこぼれ出る。
 柔らかすぎなく猛々しい、肉を噛む喜びがありながら、どこか品も漂う豚肉である。ぴったりと肉に密着した細かい衣も香ばしく、肉との調和も整っている。油切れもよく、食後感もいい。
 こうしたかつに出会うと、断然塩である。塩はうま味の強い塩とやや淡く粒子が細い塩が2種類用意されている。ソースはさらりとしたソースと、甘みが濃いながらも、酸味がきっちりと底支えをしたとんかつソースの2種類で、特にサラサラしたソースは、甘味と酸のバランスがよく、キャベツやカツを生かす。右端の脂身が多い部分はこのソースで食べるといいだろう。
 水にさらしていないキャベツは、甘み十分だが、みずみずしさがやや足りていない。白菜、カブ、胡瓜のお新香は上等、ご飯もいいが、香りと艶があればより良い。
 味噌汁の代わりにチャーシューの汁がつき、自体は上出来なのだが、とんかつの相棒としては「うますぎ」てしまう。若い人は喜びそうだが、とんかつ定食をまっとうな日本の定食と捉えている年代には、脂のぶつかりがくどく感じられてしまう。手間がかかるかもしれないが、味噌汁かチャーシュー汁を選べるようになっていて欲しいと思う。
 驚きはさらにあった。ランプ、しきんぼう(内腿の芯の肉)、トントロ(頬から首の部位)のカツがあることである。おそらくこの店だけであろう。
 肉汁をしっとり含んだランプは甘く香り、しっかりと揚げたトントロは、衣の濃い香りと薄い肉に刺しこんだ脂の甘い香りが交差して、なんともうまい。
 店は、一月に中旬に開店したばかりだそうで、こういう優れた新店に出会うと、とんかつ会議をやっていてよかったなあと思う。

 「なんで高田馬場に店を開いたのですか?」と聞いてみると、「とん太と成蔵という名店が二軒もある高田馬場で勝負したかったんです」という答えが返ってきた。かつての上野に続く、新たな東京とんかつ名所の誕生である。