東京とんかつ会議 第105回殿堂入り審議 たつみ亭 上かつ

とんかつ会議 ,

東京とんかつ会議 第105回殿堂入り審議 たつみ亭 上かつ(2800円)
肉3、衣3、油3、キャベツ2、ソース2、御飯3、新香3、味噌汁3、特記 なし
22点(各項目3点満点、特記項目含め24点満点)

 かつて荻窪には「たつみ亭本店」があった。場所は現在、うなぎ串焼きの「川勢」のところである。「たつみ亭本店」のご主人は、目黒の「とんき」で修行し、カウンターだけの店「たつみ亭本店」を開業した。

目黒の「とんき」の創業者は新潟出身で、厨房で働く人も、サービスの女性も、全て新潟人だったという。当然ながら「たつみ亭本店」も、そこから独立した今回の「たつみ亭」も、荻窪南口の「たつみ亭」も皆新潟出身だという。
 通常のロースカツではなく、20分近くかけて揚げる「上かつ」は、「とんき」の仕事の名残だろうか、縦と横に包丁が入っている。ただ「とんき」のそれは、横に入った包丁が、かなり手前に入っているが、「たつみ亭」は真ん中である。
 「とんき」とは、衣のつけ方も、揚げる油の温度も違う。高齢になられる「たつみ亭」のご主人は、彼ならではの工夫を加えて、改良に改良を重ねてきたのだろう。その結実が、厚さ4・5㎝、300gの「上かつ」である。
衣の香ばしさは相変わらずで、細かい衣は肉に密着して甘く香る。その甘い香りと抱き合うように、掃除をされた融点が低い脂は、甘い香りだけを残して溶けていく。昼のロースカツも良いが、この店に来たらやはり、「上カツ」を食べてほしい。
胡瓜、白菜、小梅のお新香も、カツの合いの手として実に良い。たっぷり入った根菜とネギの香りが漂う、味噌汁、ご飯などの脇役陣も最上ではないが、良質。
甘酸っぱいソースは、ジャブジャブかけないでほしいという願いも込めて、 小皿に注がれる。こういう点も、うまい豚肉を、とんかつを味わってもらいたいという心根なのだろう。