東京とんかつ会議百回記念 第102回 浜松町「のもと家」 カツカレー1200円(夜1800円)

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東京とんかつ会議 第102回 百回記念特別企画
浜松町「のもと家」 カツカレー1200円(夜1800円)

 今回カツカレーの店を選ぶのには、悩みに悩んだ。まず洋食屋を思い浮かべ、神田「七條」や京橋「サカキ」などを食べ歩いて納得し、人形町「そよいち」の限定10食のカツカレーにも浮気した。
 ついでに銀座「煉瓦亭」と「資生堂パーラー」というカツカレーがない店で、カツレツとカレーライスを頼み合体させるという、この上ない贅沢を選ぶことも考えたが(実際にやってみると、とんでもなくうまい)、3千円以上という高価なため断念した。
 続いてはカレー屋である。カツカレーを極めたとされる、町田「アサノ」や、下北沢「般若」、八丁堀「ロダン」など、スパイスの香り高いサラサラのカレーがカツと抱き合う素晴らしさも考えたが、今回はやめた。
 さらには、新宿「モンスナック」や神保町「まんてん」のような安価でボリューミーなカツカレーにしようかと考えたが、これもやめた。
 ならば6種類のカツが選べて、カツカレー好きの度量が試される、蒲田の「いっぺこっぺ」にしようかと思ったが、選択肢が多すぎて断念した。
 かようにカツカレーのバリエーションは幅広い。とんかつ定食と比べるとややお下品で、格下に見られがちなカツカレーであるが、とんかつ屋、洋食屋、カレー屋やスタンドカレー屋と、様々な店で健闘しているのである。
 バリエーションが多いということは、好みも別れるが、守ってほしいことはある。まずカツが揚げたてであるということ。カレーやカツの質は高くあってほしいが、カツが威張りすぎてはカレーとなじまない。あるいはカレーの味が突出しすぎてもカツとなじまない。
 その点で、「のもと家」のカツカレーはよく出来ている。なにより殿堂入りを果たした優れたとんかつ屋であるから、カツがうまい。カレーにまみれても、カツを噛めば、肉汁がこぼれ、脂の甘い香りが漂い、妙に柔らかくない、肉をかみしめる喜びがある。それでいてカレーとなじむ厚さがほどよい。
 「あのカレーは豚カツにも合うんじゃないかと思いました」というカレーは、千葉ご出身のご主人が近くにあったそば屋の大好きだったカレーを、アレンジさせたものである。
 玉葱がたっぷり入ったカレーの優しい甘みが、なんともとんかつに合うのである。そして御飯の質が高い。上等な豚汁もつく。口を休め、リフレッシュになるキャベツの千切り(ドレッシングをかけると良い)や柚子風味の大根の新香も心憎い。
 そして特製とんかつソースをカツとカレーにちょいと垂らせば、その華やかな香りがカレー香と相まって、また魅力的になる。
 後は一気呵成に脇目をふらず、食べ進むのみである。