東京とんかつ会議 第44回 銀座「和心とんかつ あんず銀座店」「上州豚ロースかつ膳」2600円

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東京とんかつ会議 第44回
銀座「和心とんかつ あんず銀座店」「上州豚ロースかつ膳」2600円
<肉3、衣2、油2、キャベツ2、ソース3、ご飯2、新香2、味噌汁2、特記なし 計18点

創業時はどの店にも行列ができていた三越のダイニングだが、平日で今なお行列ができているのは、すし屋とこのとんかつ屋の「あんず」だけである。ヘルシーブームといわれて久しいが、皆とんかつが大好きなのだな。店内は男性客だけでなく、女性客も多い。皆おいしそうにとんかつをほおばっている。
福岡の肉卸が経営するこの「あんず」は、日本全国のみならず、タイや韓国、台湾二も支店を持つチェーン店である。黒豚の血をもつ父とハイブリット種の母から生まれた優良品種である、安中・榛名地区で育った「上州とことん豚」を使う。
その豚肉は、身質がしっかりとして噛む喜びがあり、脂の切れもよく、キレイな甘みを持っている。サクリと揚げられた衣はやや粗目。もう少し細かいほうが豚肉を生かすように思う。油はコーン油で、香ばしいが、コクはラードに負ける。やや油切れの悪さが気になるものの、脂部分と筋にもしっかり火が入れられている。
下に網を敷き、その上にとんかつを乗せる盛り方であるが、こうすると皿との間にたまった熱気が下側の衣を湿らせてしまう。京都や静岡のとんかつ屋さんから始まったスタイルだと思うが、衣の質感を損ないかねることになりかねない。一考が必要ではないだろうか。
ソースが素晴らしかった.辛口は香り高く、添えられた自分でする胡麻と、とても合う。また甘口は、デミグラスのような深いうま味があっておいしい。肉自体に味があるので、あまりソースの出番はがないが。
お変わり自由のキャベツは、極細に切られて、ふんわりと盛られ、食べればシャキッとほの甘い。やや水っぽさがあるのが気になった。
ご飯、味噌汁、ともに上出来。大根と白菜の新香は、この価格、肉とのバランスを考えると、少し寂しい。一方、卓上に置かれた、切り干し大根のしょうゆ漬けは、うま味深く、とんかつを食べるリズムを高めてくれる。