東京とんかつ会議 第30回 銀座「煉瓦亭」の上カツレツ1700円 ライス300円

とんかつ会議 ,

東京とんかつ会議 第30回
銀座「煉瓦亭」の上カツレツ1700円 ライス300円 コンソメスープ800円 野菜サラダ800円
<肉2、衣3、油3、キャベツ2、ソース2、御飯2、新香(サラダ)2、味噌汁(スープ)2、特記小海老のフライ 19点(各項目3点満点、特記項目含め25点満点)>

 カツレツとキャベツの千切りを生み出した老舗である。昼夜関わらずひっきりなしにお客さんが訪れる活況は、おいしい賑わいを生み出している。
 大学四年時に、池波正太郎の『散歩のときに何か食べたくなって』を読んで、いつかこの店の「特製大カツレツ」を肴にして、ハイボールを飲みたい。そんな姿が様になる大人になってやるぞと、誓ったものでした。
 実際訪れると、そんな大人はいない。しかし、店の空気にすっとなじみ、一人で静かに酒を飲み、料理を食べて帰られる紳士には、何人か出会いました。僕もカツを肴に酒を飲む姿が様になる粋な大人になったかどうかはわかりませんが、時折ハイボールのダブルを頼み、大カツレツで酒を飲む幸せに浸っています。
 さて会議である。今回は定食ではないので、味噌汁代わりに、スープ。新香代わりにサラダを頼む変則注文をしたため、高価となったが、カツとライスなら2千円。ポークカツレツ1300円を頼めば、1600円である。
 ロース肉を使うポークカツレツに対して上カツレツは、もも肉を使う。より肉感を出すためであろうか。この店のカツレツの魅力は衣である。ラードの甘く濃い香りをまとった細かい衣が、口に近づいてくるだけで笑いたくなる。噛めばサクサクっと軽い音を立てて弾け、肉に歯が入っていく。肉に面した衣の内側も、肉汁が少し染みておいしい。衣だけでも、衣にソースや塩をかけてもご飯が掻き込め、ハイボールが飲めるほどである。
油切れも軽く、洋食屋の柱の一つであるフライを、いかに大切にしているかがわかる衣である。それだけに、肉に今一つ力がないのが惜しい。世の中がこれだけブランド豚を使い、いかにいい豚肉を仕入れ、とんかつにするかでしのぎを削っている時代では、やや寂しい。肉の水分量が多いせいか、衣が剥がれてしまうのも惜しい。
肉の塩加減、ご飯、サラダ、スープ、香りのいいソース、キャベツ、それぞれに申し分ない味であるだけに、主役の肉にもう少し頑張ってほしいと思う次第である。
ちなみに、こちらで大カツを頼んでハイボールを一杯飲んだ後は、カツが残る。そこでカレーを頼み、カツカレーにする。とても贅沢だが、このカツの厚さがカレーにするとまたよく、都内でも最上級のカツカレーとなる。