朝から散財してしまった。
僕は、駅に立ち食い蕎麦屋があると、必ず入らなくてはいけない宿命を持っている。
金沢駅の白山そば。
鶯色の暖簾に芸妓の団扇と金沢風情が漂っている。
めかぶそばを頼もうとしたら、白エビかき揚げ蕎麦が目に入った。
「めかぶそばに白エビかき揚げのせてください」。
「はい、ありがとうございます。710円になります」。
立ち食い蕎麦屋では、散財である
ここはもともとかき揚げそばでも540円という、高級店だったのね。
さてめかぶは上質で、とぅるりとぅるりと唇に触れ、かき揚げは、たまに海老の香りが弾けて、そばはとても柔らかい。
そばつゆは、東京のそれと比べると色は薄いが、少しだけ塩気が強い。
でもそれが、めかぶに合う。
かき揚げそばとおにぎりを食べていた68歳位のの男性は、途中で席を立つと水を注ぎ、一言。
「出汁が辛いね」。
「辛かったですか、すいません」と、働くおばさんたちが懸命に謝る。
あなたの責任ではないのにね。
わざわざいうほど辛くはないよ。
見ているとそのおじさん、一味を大量に振りかけて、ゴホゴホ咳をしながら食べている。
塩気を辛味で退治しようと思ったのか、それとも急にマゾ体質になったのか?
「ラーメン大盛りで」という声が聞こえた。
見ると、70くらいの男性である。
調理途中で厨房に声をかけ、「俺の頼んだ大盛りラーメン、麺柔らかくしてくれる?」と、頼んだ。
出来上がると、「おお。柔らかそうだ。よしよし」と言って、笑っている。
歯の治療中か幼児体質か、麺のコシに恨みがあるのかはわからないが、いろんな人がいるなあ。
だから立ち食い蕎麦屋はやめられないのだ。