表参道「あお」

普通という希少。

食べ歩き ,

「んん」。
干瓢巻きのうまさに思わず唸る。
ご主人と目があって、「おいしい」と、呟くと
「普通のものです」と答えられた。
だがこの「普通」に出会えることが少なくなった。
「普通」を普通に作る人が、減っていくように思う。
海苔に敬意を払った、干瓢巻きだった。
干瓢は、固すぎず柔らかすぎることもなく、ほどよい柔らかさで海苔の張りを生かしている。
味わいは薄くも濃くなく、海苔の香りを邪魔することはないが、ほっとさせる甘さを滲ませる。
味付けと柔らかさが、ここという一点で決まっている。
それは、良き握り寿司を食べた、静かな興奮の後で、心を座らせる「普通」なのである。

表参道「あお」にて