「イライラしていたり、落ち込んでいたりする時にお米を洗うと、ダメなんです。
白いお米のキャンバスに、全部自分の気持ちが出ちゃうんです」。
彼女はまだ二十代だという。
お米の神様と呼ばれる偏屈な師匠に学びながら、日々お米を洗い、炊く。
あなたが奨めた、土佐の「にこまる」おいしかったよ。
粒が際立った、艶やかなお米を口に運ぶと、甘い香りが鼻に抜け、少し硬くて、噛むほどに甘い。
一粒一粒が、「食べてくれて、噛んでくれてありがとう」と、言っているような確かな生命力に満ちている。
お米に生かされている自分を感じて、感謝する。
そんなお米だったなあ。
きっと、今日は安寧な気持ちで洗えたんだね。
君はもう、立派な職人だよ。
代官山「米花」にて。