雨がしとしと降っていた昨日は、芥川龍之介だった。
だが今朝は晴れたので、宮沢賢治にした。
「下人が雨やみを待っていた」と云うよりも「雨にふりこめられた下人が、行き所がなくて、途方にくれていた」という言葉を噛み締め、雨だれの音を聞きながら、芥川龍之介の苦みとコクを楽しむ。
「あなたの方から見たらずいぶんさんたんたるけしきでしょうが、わたくしから見えるのはやっぱりきれいな青ぞらとすきとおった風ばかりです」と呟きながら、空を仰ぎ、宮沢賢治の芳醇な甘みに酔う。
雨はやがて、霧のように降るともなく降る雨になり、燃えるような青空はやがて、赤梅色に染まっていく。
僕は、コーヒーの余韻を楽しみながら、変わりゆく景色を味わった。