“整う”

食べ歩き ,

“整う”という言葉が浮かんできた。
金沢「蕎味 櫂」の料理である。
例えば、蕎麦がきに乗せたもろみ味噌の中には、微かに蕗の薹が入っている。
赤貝とバイ貝のヌタは、塩梅のいい酢味噌が、同寸に切られた貝類を色気づける。
八寸に入れられた、サヨリのそば寿司を食べると、どこからか桜の香りがほんのりと漂ってきた。
ホタルイカの沖漬けは、遠くにゆずの香りがたなびく。
ワラビは、醤油と鰹節であえられているようなのだが、鰹節がどこにも見当たらない。
どの料理もてらいがない。
隠した香りが、どれもわずかで、心を傾けないと分からないほどに整えられているのが、嬉しい。
そして蕎麦は、甘い香りを秘めて、口元に登り、鼻に抜けていく。
薬味のおろしもさらしねぎも、緩みが一切なく、蕎麦を盛り立てる。
そして甘味の苺大福は、求肥に更科粉をまぶしてあって、炊きたてご飯のような甘やかな香りが漂い、心を和やかにするのであった。
★ 蕎麦がき、蕗の薹入りもろみ味噌
緑がかつた蕎麦ガキは口の中でぽってりと入って、そばの甘味広げる。
★赤貝とバイ貝のヌタ
★八寸 うすい豆おひたし
白魚 海老 さよりそば鮨微かに桜香 能登の野芹おひたし
蕨のしのだ巻。
ホタルイカ沖漬け 微かに微かに柚香。
★サイマキエビの天ぷら
★わらび 醤油と鰹節
★せいろ 香りと甘み
★更科粉と牛皮の苺大福。 皮が香ばしい。