懐かしい香りが顔を包み、辺りがセピア色に染まっていった。
スープをすすれば、旨味が静々と押し寄せ、充足のため息ひとつこぼれ出る。
「はぁ〜」。
なんと深い滋味だろう。
それでいて気取りがなく、すうっと誰の心にも届く親しみやすさがある。
味わいは丸いが、ぐっと味覚を捉える旨味の濃厚さがありながら、引き味がいい。
そして後を引く。
恐らく毛湯を使い、高価な干物も使っているのだろう。
なによりも養分が満ち渡り、体の芯から温まっていくのは、惜しみなくスープに力を入れた証である。
食べ進むと、姿は見えないのに、胡椒の刺激が随所であり、くちびるは、豊富なコラーゲンでペタペタになっていく。
その粘った唇を、中細麺が、小気味よく通過していくのが、いいんだな。
チャーシューは綺麗な味で、こっくりとタレの味が染み込んでいる。
そして海苔とナルトが泣かせるじゃありませんか。
これが千円とは、お値打ちである。
今の時期だけ通常営業をやめて、トゥーランドット臥龍居が麺処として昼だけ限定開店している。
急げ。
惜しみなく力を入れたスープ
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