退院後にもう一つ,食べたい
と、シミュレーションしていたものがある。
それは、「はし本」の鰻重であった。
幸にして取材が入院前から入っていたので,根性で退院し、再会したのである。
皮も皮下もきっちりと焼き込まれている,良質な鰻。
固めに炊かれてたおいしいご飯。
甘さ,辛さがぴたりと決まったタレ。
食べ方はこうである。
まず頭側を千切って口に運び、にんまりしたところでご飯を追いかけさせる。
次に、尻尾を千切り,神経を集中させながら,最も濃い味を楽しむ。
ここで淡い吸い物を飲み、奈良漬をひとかじりし、再び頭側へと向かう。
千切った一切れを脇にやり、ご飯の上にはらりと山椒をかけてから、皮側を上にして,戻す。
しかるのち、ご飯と鰻を一緒に持ち上げ,口に運びながら、食べる瞬間に裏返す。
つまり舌に直接の皮が乗るようにするのである。
まいったなあ。
「はし本」の鰻は,何十回もいただいているが,食べるたびに,ああなんと美味しのだろうと,初心の感動がいつもある







