年魚の尊さ。

食べ歩き ,

「鮎自身が持っている脂で、揚げ物のように香ばしく焼く」。

岐阜「泉屋」の 代目、泉善七さんはそう語る。八月に店で食べた和良川の鮎は、人間が鮎に敬意を込めた、至高の結晶だった。

頭からバリッと齧れば、皮目の香ばしさに入り交じって、ほの青い、澄んだ香りが鼻に抜け、肝のほろ苦さと気品のある甘味が広がっていく。

自然の偉大さに、ただただ陶然となる。

それは一年で一生を終る魚の気高き滋養に、感謝を覚える時間だった。