「地元の方に、気楽に来ていただこうと思って店名をつけました。ひまわりですか? 僕が修行したイタリアで、どこまでも続くひまわり畑の光景が心に残っていたからです」。
店名の由来を尋ねると、富山「ひまわり食堂」の田中穂積シェフは、そう答えられた。
料理に淀みがない。
富山が誇る食材が、静かに歌う。
おそらくやりすぎない、うますぎない味わいは、富山の食材への愛だろう。
名水がふんだんに満ちて、その恩恵を受けた山や海の産物に対する敬意であり、自信なのだろう。
香り高き、味わい深い食材を噛み締めていくと、奥底から清らかさが現れて、胸を打つ。
そんな料理だった。
そしてそれらを、セイズファームのワインたちが、穏やかに盛り立てる。
ああ、なんと甘い夜だろう。
1イワシのゼッポリーネのフライ。香草
海と山が呼応する。イワシのうま味と香りが広がる中、青海苔と香草が爽やかに吹き抜ける。
2、白えびと大麦、胡瓜のサラダ。
白えびの甘みが舌にもったりと広がっていく。そこに大麦のプチっとした食感と胡瓜の青い香りが加わる愉快。
3、四方のサクラマスと八尾のアスパラ。
しなやかな体を口に入れると、溶けていくように崩れていく。清流の中を泳いで来た魚が持つ清廉な脂が、滑らかに消えゆく品格。
4、ホタルイカとコシアブラのコルツェッテイ
セーターが必要なほど外は寒いが、確実に春は終わりつつある。名残のホタルイカとコシアブラが生き生きと香りを爆ぜる快感。
ホタルイカをしなやかなコルツェッティで包んで食べると、さらにいいのだな。
5、ブラウンスイスと池田の村田さんの黒毛ランプ肉の炭火焼。玉ねぎ、さやだいこん。
優しさを忍ばせるブラウンスイス。噛むほどに滋味が滴る和牛、人の心を溶かすような甘みを持つ玉ねぎ、猛々しい気分。
6、乳飲み子山羊のスパゲッティ。
鳥の胸肉のようないたいけな肉汁が、ゆっくりとこぼれ落ちる。命がすぐそばにある味わい。感謝。
7.アンチョビとカリフラワーのピチ
モチモチと歯の間で弾むピチに、カリフラワーの深い甘みがからむ。アンチョビの練れた塩気の量が絶妙。
8.黒糖のクレームブリュレ