「はあ」。
お粥を食べると心が安らぎ、思わずこんな吐息が漏れる。
中でも中国粥には、格別その力が宿っているように思う。
日本でのお粥は、病人食や清貧、食欲不振時の食事といった印象もあるが、中国人にとってのお粥は、美味を運び、栄養に満ち、体を健やかにする、毎日に欠かせない食事として深い関係にある。
宋代の詩人陸遊は、丹念に作ったお粥は寿命を延ばすといい、蘓東坡は、お粥を美味しく食べたあとの余韻は、妙なる言葉では表せないといったという。
そんな中国粥こそ、現代人にとって、まさに必要とされる料理なのではないだろうか。
そのことを痛感させるのが「桂花」のニラとクコの実の薬膳粥だ。
ゆるゆると米粒が二分の一くらいになるまで煮込まれた粥に、クコと刻んだニラを入れ、溶き玉子で閉じた粥である。
米の花が咲いたような状態になった熱々の粥をゆっくりとすすれば、米の甘みと鶏スープや貝柱の滋味が溶け合って、ゆっくりと舌を過ぎ、喉に落ちていく。
そこに溶き玉子の優しい甘みが加わって、ふぐやすっぽんなど、上質な雑炊を食べているような気分にもなる。
また時折香るニラが絶妙なアクセントで、あくことなく、最後の日とさじまで食べさせてしまう。
「はあ」。
気がつけば、胃袋は温かく、体は上気しているのに心は静まり、自然と口から安堵の吐息が漏れているはずである。
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ニラとクコの実の薬膳粥\1200