カウンター七席の店を、ご主人一人で切り盛る。昼はそば屋。夜は酒の飲まない人の入店不可という、酒とそばの店。
出汁巻玉子、蕎麦がき、焼きそば味噌といったそば屋の肴もいいが、ここでの中心は、日本初の四元鶏、媛っこ鳥を作った料理の数々。特に厨房にしつらえられた炭床で焼かれる鶏や野菜がおいしい。「媛っこ地鳥と千住葱の塩焼き」九百八十円は、肉質がしっかりとした鶏肉を噛む喜びがある。鶏もも肉の逞しいうま味と葱の甘みを、存分に味わえる。
温泉玉子に浸けて食べる「つくね 米玉の温泉卵添え」六百八十円も、つくねの優しい味わいと玉子の甘みとの出会いがいい。
また「季節の野菜焼き」(五百円~)は、香ばしく、適度に水分が抜けた野菜の凝縮した味がいい。
その他実山椒の風味に酒が進む、「鳥もつの有馬煮」五百円、下味した鳥皮を湯引きし、野菜と和えて土佐酢で味をつけた,「鶏皮ザク」五百円など、酒が恋しくなる肴は十分。
毎日挽き打つそばは、丸抜きから挽く、細打ちの「せいろ」と、玄そばから挽いた、太打ちの「田舎」の二種類。いずれも八百四十円。もちっと歯を押し返すようなコシと、すっと鼻に抜ける草のような香り、噛みこむと滲み出る甘み。清涼感と野趣が同居した、見事なそばだ。
酒は、宗玄、諏訪泉、風の森、悦凱陣、鶴齢など、燗付の具合も抜群。