喉を開くスープ。

食べ歩き ,

スープを大切にしている料理人は、信頼してしまう。
「Cosi Com’e(コジコメ)」でも、メニューの一番上に、「玉ねぎのスープ」が書かれている。
一見、オニオングラタンのようだが、そうではない。
玉ねぎの炒め方とフォンの合わせ方に、井村シェフの感覚があって、飲んだ瞬間に「一緒じゃないよ」と言われる。
カラメリゼするまで炒めてあるが、炒め過ぎていない。
あのオニオングラタンの濃密な甘みと一緒ながら、その一歩手前にとどめた弱さがある。
しなやかさといってもいいだろう。
玉ねぎの繊維が壊れ、辛味成分の硫化アリルが抜け、水分が抜けて、数種の甘み成分が凝縮していく。
だがわずかに水分が残っている状態で、止めているのかもしれない。
甘みが丸く、柔らかなのである。
そうシェフに伝えると、「そうなんです」と。嬉しそうに笑いながら、「でもちっとも出ないんです」と、はにかまれた。
玉ねぎのスープ600円。
この店の美味しい料理をいただくために、冷えた体と心を温め、喉を開くスープを飲んではどうだろう。