名前に負けず

食べ歩き ,

「だし屋」 
立ち食いそば屋にしては挑戦的。
お前さん それぞれに分というものがあるんだから、落ち着きなさい。
肩の力抜いて。
ゆっくりがんばろうよ。
が、そこまで言うなら食べてやろうじゃないかと旗の台。
一分前に昼飯食べ終えた腹さすり、暖簾を潜る。

名物らしき生姜天そば頼めば、三十秒で
「ハイお待たせしました。生姜天そばです」。と威勢がいい。
待ってないよとも突っ込みいれず、丼見れば様子が違う。
あれれ。つゆが澄んでいる。
世の立ち食いそばの、無常と不条理をぶち込んだ、漆黒のごときつゆとは大違い。
乙にすまして、楚々としてる。

まずはつゆを一口すする。
「おい親父、こりゃあカツブシおごってんねぇ」。と言いたくなる鰹節の香り。ソウダやサバ節の力強さもあるようだ。
この香りは作りおきではない証左。
上に乗るのは紅生姜と玉ねぎのかき揚げ。そばは細めん、つゆとの相性よろし。
「ごちそうさんでした」。

つゆ飲み干した丼返せば、親父もニコリ。
生姜天が300円 かけそばが200円というのも嬉しいじゃございませんか。

ああ、「また 寄らせてもらうわ」。とは言えぬ中野区住民の悲しさよ。