右手にエビフライ。。左手にハイボール

食べ歩き ,

<右手にエビフライ。左手にハイボール>
小さい頃からエビフライが好きな、生意気なガキだった。
エビフライとタルタルがあれば上機嫌になれる、単純なガキだった。
エビフライ歴半世紀の中で、小さいエビフライが美味しいよと教えてくれたのが、日本橋の「誠」と銀座「煉瓦亭」である。
二軒とも、巻きを揚げる。
「煉瓦亭」のそれは7匹。「お待ちどおさまでした」とテーブルに置かれた皿から、甘い海老の香りが立ち上って顔を包む。
もうそれだけで、幸せがやってくる。
もうそれだけで、涎が溢れてしまう。
最初の一匹は何もつけずに食べる。 
親指と人差し指の先で尻尾をつまんで、あぐっと食べる。
甘い。
下味の塩味が精妙で、巻きエビのしなやかな甘みを引き立てる。
大きなエビでは、このしなやかさがない。
甘すぎない、その未熟さに品があり、色気が宿る。
二匹目もそのままで。 
サクッと香ばしい衣に歯が当たり、クリッとエビに入っていく。
熱々のエビは、喉に落ち胃袋に届いて、穏やかな陽だまりになる。
そこで左手に持ったハイボールを飲む。
冷たい、チリチリと泡を含んだ液体が流れて、陽だまりに包まれる。
その瞬間がたまらないんだな。
その後はレモンをかけてやるやつ。 タルタルをたっぷりつけてかじるやつ。 塩を少しだけかけて食べるやつと分けて、食べ進む。
あ、そうそう、ナイフフォークもいいけど、これは絶対指でつまんでね。
味が明らかに違うんだから。