口に含むとそれは

食べ歩き ,

口に含むとそれは、おぼろ豆腐そのものである。
ふわふわの口当たりで唇を過ぎ、舌に着地すると、優しく広がっていく。
しかしこれは、鶏のささみでできている。
極少量の豆腐とささ身肉を合わせ、謎の加熱で豆腐に仕立てている。
豆腐が多すぎるとボロボロになり、少なすぎるとこのふんわり感が出ないという。
合わせる量と火加減に細心の注意を払い、熟練の技で豆腐にする。
ささみのおぼろ豆腐は、滋養に満ちた上湯と共に、澄んだ鶏のうま味を舌にのばし、喉に落ち、体の隅々へと染み渡っていく。
「趙楊」の「鶏豆花湯」。