危険な危険な

食べ歩き ,

危険な危険な、幕開けであった。


4ヶ月熟成させたという蟹味噌のソルベは、とれたてのふくよかさとは違う深さがあって、口に入れて1秒たった瞬間に味と香りが爆発する。
めまいのするような濃密さが広がるが、ぐらりと頭を揺らした後は何事もなかったように消えていく。


みんな大きいのを選びますが、本当に美味しいのは、手のひらくらいのやつなんです」と言って山田さんは、3日間熟成させた白いかを出してくれた。
厚いと歯ごたえに邪魔されて本来のうまさが味わえない。
そのイカを口に運ぶと、遠くの方でかすかなコリっとした音がしたかとおもうと、ムースとなった。
イカのムースとなってしたの上をたゆたい、歯と遊びながら、艶のある甘みを広げていく。
ああ、もうダメと言って、僕は酒に手を伸ばす。
すると酒と出会ったイカは、色っぽく笑ってさらにたぶらかそうとするのだった。


クリッ。

今度はエビが囁いた。甘エビが耳元で囁いた。
卵をたくさん持たない、身が丸く厚いのだけを選別してきたとい甘エビは、甘さが違う。
甘さが濃いのではない、清いのである。
あの甘エビ特有の、だらしのない甘さではなく、キリッとした純な甘みが舌を刺し、どきりとさせる。
それは触れてはいけないような、清廉なる、命の味である。


夏の「かに吉」まだ序章なり。