長く生きてきても、食い意地を張り巡らして、あらゆるものを食べてきても、初めて出会うものがある。
それもシンプルで身近なものなのに、初めてであでうものがあるから、世の中面白い。
「醤油握り」というものを、初めて食べた。
果たして醤油握りとは、醤油味の炊き込みご飯を握ったものなのか?
寿司のように、醤油を漬けて食べる握りなのか?
頼むと店員は、白いご飯を茶碗に入れて軽量する。
具を包んで握り出した。
おい。
僕の頼んだのは塩握りでなく、醤油握りだぞと叫ぼうと思ったが、時すでに遅し。
三角型の塩おむすびが出来上がった。
しかし一瞬視界から消えるとそれは、醤油色のおむすびとなって、現れた。
海苔を巻いて、目の前に置かれる。
つまり醤油握りとは、塩の代わりに醤油をまぶした握りなのであった。
焼いていない、焼きおにぎりともいえる。
当然ながらしょっぱいが、中まで醤油は浸透していないので、塩梅がいい。
具は、黄身の味噌漬けにした。
これが醤油と実に仲がいいのだな。
醤油と卵黄。
そう。卵かけご飯握りといってもいい、風情がある。
しかしこの醤油握りという代物は、一般的なのだろうか?
65になるまで知らなかったのは、僕だけなのだろうか?
それとも道民には、お馴染みの食べ物だろうか?
札幌にて。
きし