今まで幾度となく食べてきた料理の真実を、ある日気づくことがある。
たとえていえばこの「牛肉の八幡巻」である。
ゴボウの名産地である京都八幡市(八幡村)の郷土料理だという。
元々は、石清水八幡宮で行われる放生会(殺生を慎む行事)で川魚を隠して食べるためにゴボウで巻いて出したのが、起源だと言われている、
今はゴボウを、牛肉や鶏肉や穴子や鰻で巻いて出す。
「片折」では、最後の白ごはんのお供として、「牛肉の八幡巻」が添えられる。
年末のその日もそうだった。
ただし僕は体調の関係で、最後まで酒を一滴も飲まなかった。
酔っ払って白ご飯を迎えなかったのである。
白ごはんを一刻も早く食べたい一心で、普段は何気なく「牛肉の八幡巻」を食べてしまう。
だがその日はじっくりと味わった。
すると、八幡巻とは牛肉のためにあるのではなく、ゴボウのためにあるのではないか。
と、気づいた。
ゴボウの質と炊き加減の精妙さがあるからこそ、一層感じたのだろう。
牛脂の強さと甘辛い味付けの中から現れるゴボウの粗野が、たまらなく愛おしくなった。
金沢「片折」にて