蓋を開けた瞬間、思わず吸い込まれて、写真を撮らすに一口食べてしまった。

静岡「瞬」の鰻重である。

鰻は、焼き方や質によって、腹側を舌側にするか、皮側を舌側にするかを決める。

だが「瞬」の鰻は、どう食べるか決まっている。

横である。

つまり腹と皮を左右にして噛む。

すると「瞬」特有の肉肉しいうなぎの魅力を、存分に受け止められるのである。

歯を入れると、柔らかいのに筋肉の躍動があり、腹から脂の甘みが流れ、皮の香ばしさが抜けて、皮下の僅かなコラーゲンがちゅるっと滲む。

その途端鼻息は荒くなり、気分は上気して、

「俺は鰻は食らっているぞぉ」と、立ち上がって、大声で叫びたくなる。

そんな衝動が、体の底から登ってきてくるのは、この鰻が命の限りを伝えくるからなのだろう。