会社を辞め、食の専門家というフリーランスになって8年経とうとしている。辞める前に考えていたことは、ほとんど起こらず、予想外のことが22件も起こった。
1) 名刺の無くなる速度が、会社時代の4倍以上になった。一ヶ月で百人に会うこともある。
2) 結果、会社時代よりも、他ジャンルの方々と多く知り合うことができた。
3) 自分のせいではなく、連載などの仕事が打ち切られてしまうことを知るフリーランスの悲しい性で、新しい仕事が舞い込むと、よほど無理でない限り全部受けてしまう。
4) しかし中には、できれば受けたくないなあと思うこともある。その時は粛々ともしくは嫌々続けることはしない。この仕事は主軸の仕事ではないので、自分が面白く出来るよう、世の中が楽しくなるよう、クライアントに提案しよう。それで受けいれないなら降りる。もしくは切られても仕方ないと、考えるようになった。
5) 二日酔いの概念が変わった。会社時代は二日酔いでもなんとか午前の会議はこなせた。しかし現在私の創作活動の大半は午前に行うので、二日酔いだと一文字も書き進めない。そのため必死に様々な対策を行う。最近は「本気水素」飲むだけですむようになったけどね。
6) 会社を辞めたらゴルフ三昧と考えていたが、平日は締め切りを多く抱えており、また打ち合わせも多く、土日に旅行や出張に出かけることが多くて、逆にできなくなった。もう3年もしていない。
7) 映画見放題も同じ理由で苦労している。故に海外に行くときに機内で無理矢理最新作を見る(単にスケジュール管理が下手という噂もあり)
8) 交通費に驚く。タクシー代ではなく、会社で精算してもらっていた時代には気づかなかった、都内電車移動経費の多さに愕然とする。
9) 音楽会社時代は1030出社だったので、経験がなかったが、そうでない会社とお付き合いするようになって、朝から打ち合わせが入ることが多くなり、満員電車が苦痛でたまらない(いつも出勤している人ごめんなさい)
10) 一ヶ月に一週間ほどしか東京にいない日が来るとは、全く想像ていなかった。
11) 会社時代は、肩書きがつきまとう。それゆえ、相手が有名人だったり大会社社長であったりすると、潜在的に自分を卑下してしまうことがあったが、今は全く皆無。
12) 会社時代の“忙しい”とは違う観念の“忙しい”があることを知る。
13) それゆえ自ら「忙しい」と言うことを封印。数多くの締め切りがあることを自ら楽しむM体質になろうとしている。
14) そのため、二日間全く予定がない日を作り、ここでまとめて原稿を書くぞと決めても、あえて初日は別のことをして切羽詰まらせてから書くようにしている。
15) 会社時代には少なかった“取材”が増えた。レストランの取材は当然ながらアイドルタイムと呼ばれる昼食と夕食の間の休憩時間である。先々まで昼食と夕食の予定が詰まっている関係で、昼食と夕食の間に多くて3軒の取材を行うので、1日6食以上することが起こった。
16) 結果、会社を辞めてから8キロ太った。
17) 結果、13キロの減量もした。
18) こんなに(マニアからすれば大したことはないのだが)カメラにお金を使うとは、想像すらしていなかった。
19) 執筆活動やテレビラジオ出演以外の仕事、例えば市民大学の講座、飲食店街プロデュース、駅弁プロデュース、大手食品会社の料理コンサル、おせちプロデュース、コンサートのケイタリング、県の仕事などなど、想像外の仕事を多くいただいた。
20)これからは、出社時間も気にせず、朝寝放題だと思っていたが、原稿は午前に書かねばならず、午前に打ち合わせや移動があるため、会社時代の起床時間よりも3時間早く起きなければならないことが、日常化している。
21)午後の移動中や、喫茶店などで、自由に、昼寝時間を取れる
22)僕の文章が“官能的”とか“エロい”と言われるが、その文体を意識し始めたのは、会社を辞めてからであり、こうなるとは予測もしていなかった。