〈高崎弁当株式会社 鳥めしの食べ方〉

駅弁 ,

 

彼は裏切らない。

世の中には、ゴーカで個性あふれる駅弁が増えたが、彼はいつ食べても裏切らない。

もう彼とは、半世紀の付き合いになった。

常に時代を超えて、しみじみとしたおいしさを届けてくれる。

さてでは、食べ方と行こう。

 

1.紐をといて、いきなり蓋を開けてはいけない。かけ蓋の絵を鑑賞しよう。親と子が仲良く餌をついばむ向こうには、朝陽がのぼりつつある。この幸せな光景をしばし眺めて、心を温める。

2.紐をほどき、蓋をとったら裏返して置く。

3.上に乗ったモモ焼きと、胸のてり焼きを蓋の上に出す。

4.運搬中に海苔の上に飛び散ったそぼろを、ご飯に戻し、綺麗にする。

5、食べ進む目安となるよう、海苔を六等分に切る。

6.この駅弁の主役は、誰であろうか? それは鳥焼きでも鳥団子でも、照り焼きでもない。鶏そぼろご飯なのである。それ故に「鶏そぼろご飯に始まって、鶏そぼろご飯に終わるべし」と、口の中で三回唱える。

7.まず鶏そぼろご飯を一口。うまい。

8.おかずについて。 鳥照り焼きは、薄いながらも濃い味が染みていていい。そのため鶏そぼろご飯では味がぶつかりすぎてしまう。故に受け止めるのは海苔ご飯。鶏肉団子も同様

鶏肉団子もおなじく。

9.もも肉焼きは、肉が手強く固い。味わいはあまり感じられず、ご飯喚起力が弱い。もし酒を飲むなら、これだけ先に食べても良い。故にこいつは、そぼろご飯で受け止める。

10.六等分した海苔ご飯は、照り焼きで三、団子で二を食べ、一は残す。

11.一部海苔を剥がして、そぼろご飯と食べる

12.栗を細かくして、そぼろご飯に混ぜて食べる。うまい。

13.梅漬け、蒟蒻、わさび風味漬物は、合いの手として、途中で随時挟む。

14.おかずがなくなったら、本日のメインイベントである。鶏そぼろご飯をかきこんだら、すかさずむき出しになった茶飯を食べる。つまり、鶏そぼろご飯をおかずとしてとらえるのである。こうして食べるのが、おいしいこと。この爆発力のために、今まで粛々とおかずとご飯を繰り返してきたと言っても過言ではないり

15.最後に鶏そぼろご飯を一口食べて、大団円。、