中国料理強化月間1
フカヒレは、料理人の考えや哲学が、そのまま投影さえる料理ではないだろうか。
食材として、弱々しくもあれば、凛々しくもある。
味という味はほとんどないのだから、そこにどう味わいを加えていくか、染み込ませるかの想いが、明確に現れる。
フカヒレといっても、千差万別である。
繊維一本一本の太さや長さも違うし、食感やコラーゲンの感じ方も違うだろう。また、バラバラにするのか塊りで使うのか。
どの料理に後に出すのか、コースの主役にするのか、あるいは少し引くのか。
今日の天気はどうなのか。
来るお客さんは食べ慣れた方なのか。あるいはそうではないのか。
色合いをどう見せるか。
何と合わせるのか。
言って見れば、純粋無垢なコラーゲンをどう生かすのかという、簡単なようで困難な命題が宿っている。
安易にも使えるし、深く深く極めていくこともできる。
そんな食材ではないだろうかと、食べるたびに思う。
毛鹿鮫の尾びれを使ったというフカヒレの煮込みは、大きな塊で出された。
色は濃い。
口に入れると、ブリッと音を立てるようにフカヒレが弾け、崩れていく。
こっくりとしたコク深い味わいながら品のいいエキスを、自らの体に浸透させながら、噛むと彼方からコラーゲンの甘みがやって来る。
捕獲され、干され、年月の多くが過ぎ去ったというのに、生物として尊厳のようなものが息づいている。
そんなフカヒレ料理だった。
アワビやナマコと一緒に盛られて、一緒に食べて行くと、海洋に湧く滋養の不思議さが胸をよぎる。
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