その小さな店は、五反田の住宅街で、ひっそりと明かりを灯す。
店に入るとまず目につくのはセラーで、ナチュラルワインがずらりと並んでいる。
実はここ、寿司屋である。
寿司とナチュラルワインの店である。
カウンターに座ると、珍しい寿司板と箸置きが置かれていた。
寿司板はむき出し木地で、琴のような湾曲を描く。
箸置きは、小枝を何本か束ねたものが使われる。
「ナチュラルワインの店ですが、ワインに樽香がすると寿司と合わなくなるんです。ですからそうしたワインは合わせない。しかしそのかわりに、この寿司板と箸はワイン樽で作りました。そして箸置きは、ぶどうの木で束ねました」。
思いがワインと寿司への敬意に満ちていて、清々しい気分になった。
寿司の前につまみが始まる。
どれも創意に富んで、いやらしさがない。
そのまますうっとナチュラルワインと寄り添っていく。
そして握りである。
一流の寿司屋に比べたら、色々言いたいことがある人もいるかもしれない。
しかしそれは野暮である。
肩の力を抜いて、気のおけない仲間と笑いながら、ワインをスイスイ飲んで握りを食べる。
ご主人でもあるサービスの達人と、当意即妙な会話をかわしながら、寿司をつまむ。
間違いなく、こんな寿司屋は今までなかった。
そしてコースのお値段は、7700円だという。
こりゃ混んじゃうな。
できれば人には教えてくないんだけど。
そんな店が今週オープンする。
★バターナッツ南瓜の冷製スープ
玉葱と一緒に炒めて水と回して。甘みが自然。奥にコク。
★はじきぶどう つる紫の甘酢漬け 小柱
江戸時代の料理。大根おろしと葡萄「ピオーネ)おろしの味の素っ気なさに色がつく。
★イチジク胡麻酢和え
★舞茸天ぷら
★ミニトマトザーサイ
握り
スルメイカ 甘い
アジ 生姜
カンパチ
メヒカリ炙り 面白い。思わず笑い出したくなる。
椎茸
海老 カボス塩
づけ
赤身
中トロ炙り 溌剌とした香り
コハダ
いくら出汁漬けご飯 日本のヴァンジヨーヌを合わせて。