マティーニ

マティーニ
「カクテルの王様」とも呼ばれるマティーニは、ジン、ドライウェルモット、オレンジビター、レモンピール、オリーブという組合せながら、使う材料、組合せなど千差万別。すぐれたマティーニを出すバーをご紹介。

銀座・スタア・バー・ギンザ
日本および国際カクテルコンペティション優勝者である、岸久氏の店。出来て五年ながら風格が漂う。
マティーニは、まず砕いた氷を長いミキシンググラスの入れたあと、ドライな味とエレガントな香りが特徴のフランス唯一のAOCウェルモット「ドラン」で一回リンスする。後、冷やしたゴードンジン主体にジンの風味を生かすために常温のゴードンジンを少量加え、「ドラン」加え、華やかな香りを持つ、イタリアのウェルモット「カルパノアンティカフォーミュラー」をスプレーして、冷やしたカクテルグラスに注ぎ、グラス手前十センチ辺りでレモンピールする。オリーブはピンに刺したイタリアグリーンオリーブ。強さとまろやかさ、香りと冷たさのバランスが見事で、滑るように口もとに入り込んで、口中で香りが華開く。それでいながら、凛とした力強さを持ち、記憶に残る。口の広い円錐系グラスも、香りを生かしている。チャージ千円、マティーニ   円、ギムレット、モスコミュール、洋梨によるジントニックなどいずれを飲んでも実に秀逸。

湯島 琥珀
創業来五十年、三島由紀夫や木下順二など、様々な作家や芸術家が通った店としても。有名。
白いバーコート姿の店主木村文比古氏の作るマティーニを頼むと、まず目の前に丸く切り取ったレモンピールとピンに刺したグリーンオリーブが置かれる。ミキシンググラスにゴードンジンを入れた後、ミキシンググラスの縁にノイリープラットを密着させ、慎重にウェルモットを垂らす。そして十数回混ぜ、オリーブを入れたグラスに入れ、レモンピールする。飲んで驚くはそのまろやかさ。ジンとウェルモットの香りがエレガントに混ざり合い、非常にドライながら飲み口がやさしい。これはミキシングの技もさることながら、マティーニ用に選んだという、ラッパ型で唇のRにぴたりと吸いつく、薄いカクテルグラスの功績でもある。グラスの形状が味わいに変化をもたらすことに驚くは必至。チャージ千円。マティーニ   円。昔からの財産による古い酒や珍しい酒も豊富にあるので、臆せずに店主と相談するとよい。

青山 JADA 場合によっては電話不掲載
研究熱心なバーテンター小澤  氏が、一人で切り盛りする隠れ家バー。食べてきた食事を伝えたり、今の気分を伝えたりすれば、即席で名も無い素晴らしきカクテルを作り出す、飲み手をを第一に考えた名バーテンダーである。そのマティーニ作りの秘訣は、氷にある。カクテルが水っぽくならぬよう、作った氷を砕き、さらに締める意味合いで冷凍庫に保存した氷を使う。その氷をミキシンググラスに入れ、ブードルスを入れ、ノイリープラットを少量入れ、十数回まぜて、ピンに刺したグリーンオリーブを入れた冷えたカクテルグラスに注ぐ。ブードールス特有のジンフレーバーとほの甘い味が活きた中にウェルモットの香りが自然に溶け込んでいて、一口飲めば、きりりとした男っぽいマティーニならではの味わいが、舌をキックする。チャージ六百円。マティーニ   円

銀座 Y&MBar KISLING
ミスターマティーニと呼ばれた名バーテンター、今井清氏に師事して、東京會館、パレスホテルで、ともに五十年近く働き、その後銀座「よ志だ」で活躍し、店の閉店とともに惜しまれつつ引退された、日本を代表するバーテンダー吉田貢氏と、「MORI BAR」の毛利隆雄氏が、去年始めたバー。バックバーには、店名の由来となったモイーズ・キスリングの絵がかけられている。
月水金曜日に出ておられる吉田氏のマティーニは、伝統的スタイル。ミキシンググラスに氷を入れて水でリンスし、ゴードンを注ぎ、ノイリーを垂らすように少量注ぎ、ビターをふって十数回ステアする。冷えたグラスに注ぎ入れ、客前に運び、グラス手前十五センチ離れた位置でレモンピールする。オリーブは入れず、大きなグリーンオリーブとスタッフドオリーブを小皿で添える。そして、「申しわけありませんが、一口目はお口を寄せてお飲みください」。と吉田氏にいわれるがまま飲むと、男の度量を試されるようなドライな刺激が、口腔に流れるが、やがて中から上品な香りや甘みがにじみ出る。
一方毛火木土曜日担当の毛利氏は、冷凍したブードルスとドランを使い、百回近くステアする。最初の口当たりはまろやかながら、飲み込むとジンのキックバックがィ効いてくる。いずれも千五百円。チャージ    円

青山 2nd RADIO
閉店したRADIOとともに、青山の名バーとして長く人気。通りに面した扉を開け、地階につながる狭い階段を降りていくと、しっとりと落ち着いた品が漂う、オーナー尾崎浩司氏の美意識に貫かれた空間が広がる。バーテンダーの立つ位置が低く、彼らの目線が、カウンターにすわった客の目線より低いのが特徴。
マティーニは、大きな氷を一つ入れたミキシンググラスに、ビーフィーターとチンザノドライを入れ、オレンジビターを垂らしてステアする。ゆっくりと百回ステアされて丸みを帯びた足の低いグラスに注ぐと、たっぷりとレモンピールされる。なによりも温度がすばらしく、冷温ほどよく、唇に舌に滑らかに滑り込んでいく。
柿のカルバドスソースかけや帆立などによる、洗練された突き出し盛り合わせも魅力。マティーニ   円。チャージ二千円

霞が関、ガスライト
以前は狸穴、現在は官庁街にひっそりとあるバー。店主は酒向明浩氏。細長い店内、バックバーには膨大な漏るトウィスキーが並ぶ。銀座に支店あり。
マティーニは、ピックで砕いた氷をミキシンググラスに入れて水でリンスし、ビター、ブードルス、ノイリーを入れて、百回近くミキシングする。グラス前でピールし、最後の日とし彫りはグラス上で。オリーブは金のスティックに指したグリーンオリーブ。以前ガスライトにいた毛利氏と似たタイプである。グラスは、緩やかに広がった円筒形のカットグラス。飲み口は柔らかく、口に含んだときのジンの風味は抑えられているが、コシのしっかりとしたブードルスに支えられて、飲み進むとキレと強さを感じるマティーニ。チャージ千円。マティーニ   円。