「ご主人様 昨日は激しく飲まれてご帰宅された様子でしたので、今朝はブコッグをご用意させていただいております」
「おお、ブコッグか。それは嬉しいな。二日酔いには本気水素が一番だけど、ブコッグも欠かせんな。ありがとう」
やがて湯気を立て、味噌色のスープが運ばれた。
スッカラですくい、ゆっくりと口に運ぶ。
干し鱈のうま味が、優しい滋養が舌の上に広がって、喉元に落ちてゆく。
汁は、酒で荒れた喉や胃袋をいたわるように舐めながら、体の隅々へと行き渡っていった。
汗が滲み、味覚が起き、脳が動き出す。
重い頭が少しずつ晴れ渡っていく。
日本には韓国料理が多いが、ブコッグを置いてある店は少ない上に、まともなブコッグはほとんどない。
このように、ブコッグとは素朴で、淡味でなくてはいけない。
干し鱈の力だけを信頼しなくてはいけない。
その優しさがあるからこそ、二日酔いは退散し、五感は復活していく。
そんなブコッグが毎日食べられることが、なにより嬉しい。
虎ノ門横丁「ジャン」にて。
来週から、サンゲタンやユッケ風のご飯泥棒のおかずが新メニューとして加わるそうです。