上湯が静かに微笑んでいた。
湧き出る滋味は、底が見えぬほど深い。
だが、どこか軽やかな味わいがある。
聞けば、金華ハムではなく、自家製の生ハムで出汁を取ったという。
干し貝柱も、フカヒレもすべて宮城産である。
きれいで穏やかな上湯の中を、フカヒレが泳いでいく。
お相手に用意されたのは、栗ご飯だった。
蔵王町の栗を、茹で、蒸し、焼きと、3種類の調理法で加熱し、ご飯とまぶしている。
そのため、栗一つ一つの香りが違う。
それがご飯と共になって、舌と鼻腔をくすぐる。
そよ風のようなくすぐりに、一人笑う。
フカヒレをかけて掻き込んでみた。
上湯と栗ご飯。
互いの穏やかさが、すうっと馴染み、心を抱きしめる。
宮城の海と大地の豊穣が、誇らしげに溶け合った瞬間だった。