台北 「晶華軒」

トンユイ。

食べ歩き ,

中国料理に「凍魚トンユイ」という料理がある。
潮州料理の一つで、簡単に言えば、魚を丸ごと蒸して冷やし、発酵した豆のソースを添えた料理 となる。
「晶華軒」でも、「潮式凍馬友 」として、前菜に出された。
なんといっても美しい。
フランス料理の、魚のゼラチンがけ冷菜と同じく、表面に薄いゼラチン状があって、輝いている。
食べればその部分がつるんとして、皮下からニュルンとコラーゲンが現れ、しっとりとなった魚の身が舌に広がっていく。
なんともエレガントな食感で、うっとりとなった。
そこに発酵大豆を加えると、塩味がほとんどないきれいな魚の味に、練れた、しぶとい味が加わって、いやらしい味となる。
世は、儚さがあってこそ豊かさは生き、豊かさがあってこそ儚さに光が当たるという真理を、教えられる味でもある。
しかし蒸して冷やしただけでは、この食感は生まれない。
シェフに聞いてみた。
魚を蒸したら、皮が破れぬよう、丁寧にひっくり返し、さらに置くのだという。
その上から煮汁とルースイをかけ、冷やしていく。
おそらくそれにより溶けたコラーゲンが固まり、ゼラチン化していくのだろう。
提供前時に、再びひっくり返して盛り、表面を軽くバーナーで炙って、均一に薄くし、かつ輝きを出すのだという。
美味にはすべて理由がある
 
晶華軒にて