「トリュフ定食’07」である。
全7皿。
粒。
千切り。
ピュレ。
薄切り。
角切り。
棒切り。
様々な形に変化して登場するトリュフは、内包する表情の多様さを、めくるめく官能へ導きながら見せてくる。
歯ざわり。
甘酸っぱいような味わい。
香りの変化。
妖艶。
濃密。
温度による違い。
色合い。
相性と調和。
一皿ごとにテーマが込められていて、飽くことなく、トリュフという底なし沼に引き込まれていく。
シェフ山口浩氏の真骨頂だ。
中でも面白かったのは
「ブルターニュ産オマール海老のアロマートトリュフ」と名づけられた皿。
厨房から出てきた瞬間、あたり一面に淫靡な香りが漂い、一同陶然となった。
他のどの皿より、立ち登る香りが強く、胸の内が騒然となる。
オマールは、ミキュイでほんのり温かく、優しく甘い。
トリュフの量がそんなにあるわけではない。
ジュを隠し味に大量に使っているわけでもない。
ではトリュフオイルを加えているのだろうか。
たずねた。
答えは温度だった。
ティエド。
皿全体を生暖かい状態に仕上げることによって、揮発性の香りをとどめる。
まさにフランス料理のエスプリがここにある。
うなぎのタレのように注ぎ足し注ぎ足して味が重ねられていく、蒸し焼きの肉汁とトリュフジュースをかけた、アレキサンドル・デュメーヌ考案の調理法による
「丸ごとトリュフとばら肉の蒸し焼き、レタスと茸添え」の、
高貴と異なる、庶民的親しみやすさも見せるトリュフ。
どこまでもエッチな、トリュフを挟んだ
「ブリーチーズ」。
アスパラとトリュフが交互に香るように仕組まれた皿。
などなど
最後の「トリュフアイス」 に至るまで、
おや、こんな面もあるのか、いや今度はこう来たと、
多面性を見せながらも、手玉にとり、魅力に埋没させていく。
手が届きそうで、届かない。
悟られそうでいて、するりと手の中から抜け出していく。
あれなにか似てない?
トリュフって怖いのね。
神戸北野ホテル
トリュフ定食。
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