トマトが生きている

食べ歩き ,

トマトが生きている。
「そんな特別なトマトじゃないです。ヘタごと半分に切って、10数分ですか、煮ただけです」
中村シェフは、そうことなげに言う。
でもその火加減、潰し方、濾し方に、細心の注意を払い、誠心誠意を込めているのだろう。
皿の上に顔をかざすと、太陽の香りに包まれた。
丸い酸味と柔らかな甘みは、トマトの純粋である。
使うトマトを信じて、味の芯だけを自然に抽出した味である。
あらゆるトマトソースのパスタを食べたが、そこに夏の青空が広がっているのは、「ロッツォシチリア」だけである。