トゥルン。

食べ歩き ,

「蟹食べますか?」
「はいっ」。
即答した。
カンジャンケジャンといえばワタリガニだが、ズワイ蟹で作ったのだという。
殻から掻き出し、口に入れた。
「トゥルン」。
蟹が舌に歯に甘えて、しなだれる。
ゆっくり噛めば、蟹肉の甘みに醤油ダレが優しく溶け込み、とてもいやらしい。
生きたまま醤油ダレに漬けられた蟹は、タレの味と交わりながら、自らの淡く甘い味を、そっと舌に落とす。
「これはマッコリより日本酒だあ」と、燗酒をもらった。
蟹肉を食べる。
「トゥルン」。
燗酒を流し込む。
すると蟹は、温かい酒に出会って頬を赤らめ、そのきれいな甘みに艶を刺すのであった。
しかし喜びはまだ終わらない。
甲羅にたっぷりとある蟹ミソに、白いご飯をぶち込んで混ぜ混ぜする。
そいつを一口食べたとたんに、「ああ」と叫んで、体が仰け反ってしまう。
そしてこの蟹ミソご飯に、燗酒を合わせるのである。
それがどんな幸せかは、もう書くまい。
月島「韓灯」にて。