寿司屋の話を書くのに、肝心の握りを差し置いて、甘味のことを書くのはどうかと思う。
しかし面白く、これはありだと合点したのである。
「ネパール山椒を練り込んだ白羊羹です。豪徳寺のネパール料理に勉強に行かせていただいた時に、これは甘味に使えると思い、分けていただいたんです」。
ご主人はそう言われた。
「オールドネパールですね」。
「そうです」と、微笑まれる。
白小豆の優しく太い甘さが広がる中で、ティムールの爽やかな、柑橘系の香りが抜けていく。
料理と寿司を締めくくる甘味として、香りから来るその軽やかさが嬉しい。
フォアグラ稲荷、炊いた海老味噌をかました海老の握りなど随所に個性が見られるご主人の仕事の一つである。
神楽坂「一宇」にて